2008年1月25日アーカイブ

 捜査段階で被疑者の弁護人になることを起訴前弁護とか被疑者弁護などと私

たちは呼んでいる。捜査の段階で弁護人が就く場合は大体二つだ。被害者と示

談をして不起訴処分の獲得を目的とする場合、当初から被疑者が否認をしてい

て自白調書を作成させないことを目的とする場合である。

 後者の被害者との示談交渉のための弁護というのは、私は、実は苦手だ。被

害者は被疑者から悪いことをされているのに、その人に向かって許してくれとお

願いしなければならないのである。もちろん、慰謝料の支払いなどを条件にという

ことになるが、結構面倒な仕事だ。また、その示談交渉にはリミットもある。逮捕

されてから逮捕の3日間、拘留の20日間、つまり逮捕されてから23日経つまで

に示談をしなければ、その被疑者は起訴される可能性が大きくなる。反対に示

談が成立すれば、被害者が宥恕していることになるから、不起訴あるいは略式

起訴ということになる。だから、被疑者もその家族も必死だ。

 けど、弁護士は憂鬱だ。示談するもしないも、相手方次第だからだ。示談の弁

護を頼まれると、今度はうまくいくのかなあ、うまくいってほしいなあ、そう思いな

がら、被害者に電話をする。「本当にすみません。Aに代わって謝罪しますので許

してください」という。中には当然「もう電話しないでくれ」という人もいる。その結

論を被疑者らに伝えることも憂鬱だ。被疑者は、被害者の気持ちなどあまり考え

ない(人が多い)。なかなか示談ができないと、「なんで相手は示談してくれない

んですか」「ちゃんと(弁護士は)仕事してるんですか」などと被疑者側から弁護

士は責められる。申し訳ないが、あなたがたの仕事だけやっているわけじゃないし、

と思っても、それをそのまま言うわけにもいかず、何だか精神だけが磨り減ってし

まうのである。

 

 

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