2008年5月25日アーカイブ
『冤罪弁護士』という本が旬報社から出た。著者は今村核弁護士、私が司法
試験の受験の際にお世話になった大先輩である。
今村さんの扱ってきた無罪事件は、窃盗、痴漢、放火、暴行、などなど、いず
れも頻繁に起こる事件ばかり、つまり、私たち弁護士も日常的に扱う事件ばか
りだ。どうして、今村さんがこれだけ無罪事件にあたり、私たちがあたらないのか、
もしかしたら、私たちのいい加減な弁護活動が知らず知らずのうちに冤罪を見逃
してしまっているのではないかとさえ思う。
例えば。
放火事件で男性が逮捕された。男性は、当初否認を続けたが、刑事の執拗な
取り調べに困惑して「2階に火をつけました」と自白した。ところが、消防署の火
報告書は、出火元が1階のみと断言していた。そこで、検察は、2階も出火元で
あったとの鑑定書を専門家から作成してもらい被告人を起訴した。
今村さんは、消防署の報告書と被告人の自白との不一致に目をつけ、自ら2階
が出火元ではないという鑑定書を専門家の協力で裁判所に提出。無罪を勝ち取っ
た。
普通の弁護士であれば、自白と客観的証拠との矛盾を主張して良しとするので
はないか。ところが、今村さんは鑑定書まで作成する。そこが、普通の弁護士と
違うところかもしれない。
ホントにすごい弁護をしているのに、事実経過を淡々と書く飾らない文体。今村
さんの人柄がにじみ出る文章だ。まだ、刑事弁護を一所懸命やりたいという志を
忘れない弁護士のみなさんに一読を勧める。
