2009年2月28日アーカイブ

 それにしても、総会での死刑廃止決議をめぐる論議は重々しかった。

 賛成者は、死刑が人権規約に反すること、たびたび国連からも警告を受けて

きたこと、死刑は国家による殺人であること、などを理由として述べた。

 反対者は、自分の家族が殺されててもなお死刑を廃止するといえるのか、死

刑賛成が80%という世論を無視できないのではないか、などの理由を述べた。

 ベテランの弁護士の発言がほとんどであった。総会出席者は、110名を超え

ていたが、関係のないおしゃべりをする人もなかった。天井を仰ぎながら自分自

身に賛否を問いかけていたような方々が目についた。

 なぜ、いきなりこの時期に死刑廃止決議をつきつけてくるのかなあとも疑問に

思った。しかし、裁判員制度施行を5月に控え、一般の市民が死刑を選択する場

にも直面すること、死刑執行の頻度が急増傾向にあること、無期懲役が事実上終

身刑化し、残虐な刑を人々が容認しつつあることからすれば、この時期の問題

提起はむしろ時機を得たものというべきなのだろう。

 私は、死刑に反対である。それは人殺しであるからである。また、残虐犯罪を

犯したものに対しても、まったく希望のないような刑は望ましくないと思う。自分の

家族が殺されたときもそう思うかとの考えに対しては、弁護士として社会のシステ

ムをどう考えるかということと個人の問題とは切り離して考えるべきだと思う。

 ただし、弁護士会としてどのような決議をするべきなのかということについては

迷う。まず、弁護士は被告人にもっとも近い立場にいる人間だ。残虐な刑を執行

されても、確定囚たちはそれに反対する声を上げることは事実上不可能で、代わっ

て言えるのは弁護士しかいないと思う。また、弁護士会という立場での決議には

社会も耳を傾けざるを得ない。その意味ではこの時期になんらかの決議をする必

要はあるだろう。 しかし、死刑賛成、反対が拮抗する状況で会としての総意を意

味する決議を賛成多数で押し通してよいのだろうかということも考える。

 結局、賛成、反対の意見が拮抗し、表決は次回の総会に先に繰り越されること

となった。決議の必要性、影響力と会員個人の少数意見をどこまで尊重するかで

難しい決断が迫られる。

 

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