Jack Land 相談室 上越エリア情報誌 ジャックランド

堕胎罪

 私の子ども(高校生)が女性と交際して妊娠させてしまいました。経済力がないので堕ろした方がいいと思うのですが。

【堕胎は犯罪です】
 お腹にいる赤ちゃんを体外に出して死なせてしまうことを「堕胎」といいます。これは立派な犯罪です。胎児であっても人と同様に生命体であることに変わりはないからです。
 妊婦が自分で堕胎した場合、他人が妊婦の承諾を得て堕胎した場合でも犯罪が成立します。東京の慈恵会医大病院の医師のように、女性の承諾を得ないで薬を用いて流産させた場合にはさらに重い刑に処せられます。

【医師の人口妊娠中絶は違法か?】
 いろいろな事情で、妊婦が医者に堕胎を依頼して医者が中絶手術をすることがあります。だから、堕胎は犯罪ではないと思われがちですが、そうではありません。堕胎手術につき①医師会指定の医師によって胎児が母体外では生命を保持することのできない時期になされ、②あらかじめ妊婦とその配偶者の同意があり、③出産によって身体的又は経済的理由によって母親が健康を害する恐れがある、場合に法律上違法性がなくなると判断されるに過ぎません。
 ただし、医師には「経済的理由」が妊婦の健康を害するか否かの調査・確認義務はありません。そのため、実際には本人の申出があれば人口妊娠中絶を実施できることとなり、これが堕胎ついての罪の意識を希薄化している一つの要因になっているわけです。

【堕胎の勧めは不法行為である】
 設問のような場合には、男性側としては、世間体もあるし経済力もないわけだから、「中絶した方がいい」とアドバイスしたくなるでしょう。
 しかし、妊娠した女性にしてみれば、お腹に宿した子の命を断ち切ることは切ないことで、最後まで悩んで当たり前です。しかも、繰り返しますが堕胎は犯罪です。したがって、女性の気持ちに配慮せずに度を越えて堕胎を勧めた場合には、堕胎を強要されたとして慰謝料を請求されることもあります。
 私は、縁あって生まれてくる大切な命を、世間体や経済的な事情で簡単に断ち切るべきではないと思います(2010年10月11日記)。