Jack Land 相談室 上越エリア情報誌 ジャックランド

暴力団員の弁護

 私の彼氏が恐喝で逮捕されました。暴力団の下っ端だったようです。暴力団組員でも、弁護士は弁護人になってくれますか。また、組員の弁護で一般の場合と異なることはありますか?

【「団」の弁護か「人」の弁護か?】
 暴力団は反社会的団体です。しかし、個々の団員も一人の人間です。だから、弁護士としても、依頼を断る理由はありません。ただし、弁護士にはいろいろいて暴力団の事実上顧問のような方もいれば、暴力団に所属しているというだけで依頼を断る方もいます。あらかじめ、お願いしようとする弁護士の下調べをしておいた方がいいでしょう。
 私の場合は、暴力団に属しているからといって依頼を断ることはありません。ただし、団員の弁護はするけれど暴力団の弁護はしませんと、あらかじめお断りするようにします。というのも、接見禁止決定があり被疑者に弁護人以外の者が接見できないとなると、仲間から「どんなことを話しているのか確認してくれ」と言われたり、やたら接見に行くように言われて事実上暴力団の連絡役みたいなことをやらされることが多いのです。これでは、「人」の弁護なのか「団」の弁護なのか自分でもわからなくなってしまうからです。
 だから、弁護士費用も家族からいただくようにしていますし、家族が用立てできないのであれば、国選弁護人の選任を受けて費用は国から支払を受けるようにしています。

【暴力団犯罪への量刑は厳しい】
 私の経験ですが、暴力団に所属していることを相手に示して一般市民に対して100万円の支払いを求めたという恐喝未遂事件を弁護したことがあります。
 本人は暴力団を脱会しましたし、前科もなかったし、被害者には相当の慰謝料の支払いを提案しました(被害者は応じなかった)。しかし、裁判所からは、実刑を言い渡されてしまいました。暴力団犯罪の場合は一般の量刑に比較するとかなり厳しい量刑になるということを覚悟しておくことが必要です。

【退会させるには家族の力が不可欠】
 暴力団員の場合は、暴力団からの退会を決意させることが有力な情状弁護になります。
 ただし、団に入るにはそれなりのやむを得ぬ事情があるはずです。誰も自分のことをわかってくれないと自ら心の壁をつくったり、或いは脱退した後の報復を恐れたりしている場合もあります。それを、たまたま出合った弁護士や裁判官が偉そうなことを言ったところで説得力はありません。やはり生活を共にしてきた家族の力が不可欠です。ともに過去を振り返り何が間違っていたかを互いに反省すること、どんなことがあっても家族が支えてあげると言ってあげることが、氷のような固い心の壁を溶かしてくれるはずです(2010年8月11日記)。