鴻上尚史 『「空気」を呼んでも従わない』(岩波ジュニア新書)
今年は、空気を読まないで突き進む「サクラ」と「さくら」、二人の女性に励まされた1年でした。
打越さくら。参議院議員選挙の2カ月前にやっと野党統一候補になる。「県外者」「よそ者」「落下傘候補」。散々な言われ方をされてもめげずに全県下を回り有権者に訴える。その姿が何ともカッコよかった。そして当選。「空気を読んでる場合じゃないでしょ!」と彼女に叱られ励まされたそんな選挙でした。
そして、同期のサクラ。なぜか名前が一緒なのは歴史の偶然なのかなあと思いながら、来週の最終回を楽しみにしています。
鴻上尚史の『「空気」を呼んでも従わない』は、この得体の知れない日本特有の「世間」という「空気」を解明したものです。
鴻上は、「世間」は一つにまとまるために「仲間外れ」を作り出し、その一方でグループの一員には「みんなと同じことをしないといけない。みんなと同じ格好をしないといけない。みんなと同じことを言わないといけない」という強いプレッシャーをかけてくる。これが息苦しさ生きづらさの原因になっているといいます。
(仲間外れをおそれない)
そして、それに従わない生き方を指南してくれます。私が参考になったのは「仲間外れをおそれない」という一文です。
仲間外れになった場合どういう選択肢があるのか。「一人のみじめさ」を選ぶのか。それとも「友達のふりをする苦痛」を選ぶのか。鴻上は中学時代、どっちがイヤかを考えて「一人のみじめさ」を選んだ。「友達じゃないのに友達のふりをする」ことが本当にいやだったからと述懐する。しかし、しばらくすると、「一人のみじめさ」を選んだ人がいることに気づいた。そして、その人と話し始めると本当の友達になれることができたという。
別に「一人のみじめさ」を選んでも死刑になるわけではない。自分と同じような生き方を選択する人はどこかにいる。こういうプラス思考が彼の根底にあったんでしょうか。世界は自分が思うよりもすごく広いんですよね。狭い世界から抜け出す覚悟さえあれば、どうにかなるんじゃないかと思うんです。