鴻上尚史『不死身の特攻兵』(講談社現代新書)
先日、鴻上尚史の本を紹介しましたが、『不死身の特攻兵』も同調圧力に抗する術を探そうとした作品の一つです。
佐々木友次。陸軍の第1回の特攻隊パイロット。太平洋戦争末期、陸軍の命令で特攻隊として9回の出撃命令、いずれも体当たりしろという上官の命令でしたが、それに抗い、爆弾を落として、9回とも生きて帰ってきました。
何度目の帰還の時、司令官が佐々木に対して「きさま、それほど命が惜しいのか、腰抜けめ!」というと、佐々木は「おことばを返すようですが、死ぬばかりが能ではなく、より多く敵に損害を与えるのが任務と思います」と言い返した。司令官は激怒したという。
どうしたら、軍隊という上命下服の世界で司令官に抗う発言ができるんだろう?佐々木は、飛行機に乗って空が飛ぶのが好きで好きでたまらなかったらしい。それが死ぬことよりも生きて帰ってくることを優先したのだろう。「集団我」に個人を埋没させないためになにかを持つことが重要なのだと思います。