雪の街だより 高田在住の弁護士馬場秀幸のブログです

1月13日 〇 日本で共同親権の導入は早すぎる

2022.01.13

 法制審議会(法務省で法案作成の際に専門家が集まって会議するところ)で共同親権の議論が始まった。
 民法では、父母が婚姻関係中は子の親権は父母にあり父母が共同で行使する、離婚する場合には、子の親権は父母のいずれか一方だけに決められることになっていた。これでは、親権者でない親と子の面会交流が進まないことがあり、離婚後も共同親権にしたらどうか、という議論が展開されてきた。

(私は実務の立場から考えてみた)。
 親権者でない親に子との十分な面会の機会を保障すること。これは、離婚事件を扱ってきた者としては本当に切実な課題と考えている。ただ、それが「共同親権」でうまく解決するとは到底思えない。

 面会交流がうまくいかない場合、その原因は、1)親権者である一方配偶者が強い拒否的な姿勢を示していること、2)1)の場合、家庭裁判所にも面会交流を促進させる力がとぼしく(多くの事例で粘り強い説得がなされるが功を奏さない場合もある)、3)1)の場合、面会交流を取り持とうとする第三者機関もまだまだ成長途上である、にある。

 だから、1)親には夫婦関係と親子の関係を切り離すことを理解してもらうこと、2)フレンドリーペアレントの原則を離婚の際の親権者決定や、親権者変更の際のファクターに重要なものとして取り込んでいくこと、3)面会交流の第三者機関と司法機関とが連携を密にしていくこと、が必要と思う。これは一朝一夕に解決するものではない。そして、父母に離婚後も「共同親権」という資格を与えなくてもできるものである。

 むしろ、「共同親権」という資格が与えられることで、家庭内暴力やモラハラから逃れたい思いで離婚を選択した一方が「共同親権」によって子の成長の時々の場面で他方との話し合いを余儀なくされて離婚をした意味がなくなってくる怖れがでてくる。特にまだまだ男女関係で男優位の日本社会ではこの懸念は決して杞憂ではないはずだ。
 
 だから、日本で共同親権を導入するのはまだ早すぎる。もっと、夫婦関係、親子関係についての成熟した考えを国民に浸透させていくことを優先するべきである。

馬場秀幸  カテゴリー:その他