雪の街だより 高田在住の弁護士馬場秀幸のブログです

1月26日 相続放棄のお話その4 最近受理された相続放棄の件。

2022.01.26

 私の依頼人は市内に居住する80歳女性。死亡したのは女性の弟で70歳だった(既に二人の両親は死去)。弟は昨年7月30日横浜市内のアパートで孤独死。8月初旬に警察が発見して女性に連絡。死亡の通報を受けた市役所も、同じころに女性に対して未納税金の請求をしてきていた。この女性が私のところに来たのは12月中旬。僅かだけれど、死亡の事実を知ってから3カ月が過ぎていた。
 
 さて、ここでの相続放棄、手遅れなのかどうなのか?

 話を聞くと、弟は18の頃にやくざ者になり親に勘当されて東京に行きその後連絡が途絶えてしまったという。戸籍をみると、同じころに父親が家裁に推定相続人の廃除請求をして認められた旨の記載がのこっていた。女性にとってみれば、弟がその後東京でどんな生活をしていたのか全然知る由もなかった。
 しかも、死亡を知った当時は、世間は緊急事態宣言発令下。弟のことで東京や横浜に行くわけにもいかない。まして、女性には車もなく身動きも事実上できないし、何をしたらいいのかもわからなかった。

 弁護士としては、何十年も前に連絡が途絶えたため、家族関係や財産関係については死亡を知った当時何も知り得なかった。しかも緊急事態宣言は9月末までされていたので、それまでは調査をするにも身動きが取れなかった、そして弟には妻も子もおらず、自分が相続人であることを知ったのは弁護士に弟の戸籍を取り寄せてもらったときだった、以上から、熟慮期間開始日は戸籍を取り寄せて相続人であることを確認した日であり、いまだ3カ月以内の相続放棄であると主張した。

 今日になって家裁から相続放棄受理通知書が届いた。死亡を知った日から熟慮期間を経過しても、合理的な事情がある場合には放棄が受理される。あきらめずに弁護士に相談してほしい。

 

馬場秀幸  カテゴリー:仕事