1月7日 ベトナム人女性の嬰児遺棄事件の判決見直し
今日は仕事の話である。
自宅で死産した双子の遺体を遺棄したとして、死体遺棄罪に問われたベトナム国籍の技能実習生の女性の上告審で、最高裁第二小法廷(草野耕一裁判長)は検察側、弁護側の双方の意見を聞く弁論を来年2月24日に開くと決めた。弁論は二審判決を変えるのに必要な手続き。弁護側の無罪主張を退けて有罪とした二審・福岡高裁の判断が見直される可能性がある(朝日新聞2022年12月9日)。
女性は、技能実習生として来日し、熊本県の農園で働いてきた。2020年11月、自宅で双子を死産した。妊娠がわかれば帰国させられると思って周囲に相談せず、遺体をタオルに包んで部屋にあった段ボール箱に入れた。翌日病院を受診した際に死産を明かしたため、死体遺棄罪で起訴された。一審二審ともに死体遺棄罪の有罪判決(二審判決は懲役3か月、執行猶予2年)だった。
刑法190条は、死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者は、3年以下の懲役に処する、と規定する。問題は、死体を「遺棄」したと言えるかどうかだった。
二審の福岡高裁判決は、遺体を段ボール箱に二重に入れ、テープで封をした行為が隠匿にあたり死体遺棄罪が成立する、とした。
しかし、「遺棄」とは風俗上の埋葬と認められない方法で死体を放棄或いは放置することである。高裁判決は、遺体を段ボールに入れてテープで封をしたことが非常識と考えたのだろうが、その箱は女性の部屋の中にあったし、女性は、落ち着けば自分で埋葬しようと考えていたという。自分の占有下にあったともいえ、「遺棄」とはいえないのではないだろうか?
女性は、妊娠が発覚すれば帰国させられると思い、周囲にも相談できず、結果として孤立出産をせざるを得ない状況に追い込まれていた。こういう状況で、女性が埋葬ということまで頭が回らなかったとしても仕方がないのでないかと思われる。
可罰的違法性があったのかどうか。適法行為の期待可能性は?上告審の判決に注目したい。