雪の街だより 高田在住の弁護士馬場秀幸のブログです

NEW7月29日 特養「あずみの里」事件で逆転無罪判決その2

2020.07.29

(事件の概要)
 2013年12月12日午後3時20分頃、特養施設の食堂で85歳の女性入居者がおやつとして提供されたドーナツを食べていたところ意識を失った。女性はその後救急搬送されたが、意識がもどらないまま2014年1月16日死亡した。
 検察は、2014年12月に、その女性の近くで別の入居者に食事の介助をしていた准看護師を、死亡女性の食事の様子を注視する義務を怠ったとして業務上過失致死罪の疑いで起訴した。検察は当初このような過失を注視義務違反として主張していたが、現場では他にも介護職員がいてなぜその看護師だけが注視する義務を負うのかという疑問が弁護側から呈された。その後、検察は訴因変更をして、おやつをドーナツからゼリーに変更するべきであったのにその確認を怠ったことが過失と主張した。1審判決はその変更された訴因の主張を認め、罰金20万円の有罪判決。看護師が控訴して今回の逆転無罪判決が昨日言い渡された。
(感想)
 訴因変更というのは、有罪の理由となる事実主張を変更することだ。大体、訴因変更というのは裁判所が検察官に公判途中で持ち掛ける。今のままでは無罪になるから理由を変更してみたらどうですか、というものだ。ここまでくれば、検察官は半分負けたも同然である。弁護側はあともう一歩ってところにまできた。それでも1審では負けたのだから、弁護団としては悔しかったろうと思う。
 この事件では、まず誤嚥・窒息が直接の意識不明の原因だったのかははっきりしない。その少し前まで女性は固形物を食べていたというのである。弁護側は死因が誤嚥・窒息ではなく、脳梗塞によるものと主張し、医師らからの意見書も準備していた。そして、控訴審の判決も、嚥下障害が認められず、ドーナツで女性が窒息する危険性の程度は低い、看護師も窒息する危険性などの予見可能性は相当に低かったはずと認定している。もう少し警察・検察が慎重に捜査をしていれば、起訴することすらためらわれた事案ではなかったかと思われる。特に、2014年の3月には遺族と施設側との間で示談が成立している。だから、なぜことさらに刑事事件にまでもっていったのかという疑問がある。

馬場秀幸  カテゴリー:その他