7月31日 特養「あずみの里」事件で逆転無罪判決その3
ドーナツを食べていた高齢の女性が突然意識を失った、その近くで看護師が他の利用者の食事の介助をしていた。看護師はその女性のドーナツを食する行為に何も関わっていない。この状況で、どうして看護師の過失を問おうとしたのだろうか?こういうところにまで刑事責任が問われることになれば、間違いなく介護の現場は委縮する。
いろいろな記事から推測するしかないが、この女性の意識を失った原因について、施設は当初誤嚥・窒息が原因であるかのように考えたらしい。そこで、警察・検察がその女性の食事の様子を注視していれば女性は助かった、或いはドーナツをたべさせずゼリーを食べさせていれば女子は助かった、それをしなかったことは施設職員の落ち度ではないか、という論理で捜査をしていったのではないか、と思われる。
公判では、弁護側が意識を失った原因が誤嚥・窒素ではなく脳梗塞であったとの主張・立証を試みている。医師の応援も得ているようだから、その可能性は高かったのではないだろうか。
ただし、それは後日改めて落ち着いて考えるからこそできるのであって、その意識をなくした当初に正確な原因究明など無理だろう。日々の業務に追われ、まさか刑事事件など予測もつかなかっただろうから、現象面をみて「誤嚥・窒息」と考えてもやむをえないことと思われる。
今回の事件は、警察・検察の安易な見込み捜査が大きいのでないか。施設が総括した「誤嚥・窒息」を前提に女性にもっとも近かった看護師を犯人に仕立て上げて一丁上がり的な感じで起訴をしてしまったのだろう。介護現場の事件は、被害者が高齢で容易に事故が起こりうる。被害者が招いた事故なのかどうかが判然としない。こういう特殊事情に配慮して慎重な捜査が必要である。