雪の街だより 高田在住の弁護士馬場秀幸のブログです

9月17日 三者面談のこと マンガ家矢口高雄さんの場合

2021.09.17

 矢口高雄さんの作品に矢口少年の思い出を描いた『蛍雪時代』(講談社文庫)という本がある。
 その第5巻の「雪の夜」には、矢口少年の進路をめぐって担任の先生が矢口少年の自宅を訪れて「三者面談」をしたときのことが描かれている。
 矢口少年は秋田の山村で生まれ育った。その当時は中学を卒業すると多くの子が就職をしていた。矢口少年も、中3の冬になり東京への就職が予定されていた。
 ところが、自宅を訪れた担任の先生は、高校進学を熱心に勧める。しかし、父は高校に出すお金などまったくないという。矢口少年は、進学したいという気持ちがありながら、家の経済力もわかっていただけに何もいえず、先生と父の話を黙って聞いている。先生と父の押し問答がずうっと続く。最後に、母親が決心したかのように口を開く。「おとうがんばるべ・・・」「おら一人でだって入れてみせる」「昔の人たちは百姓に学問なんかいらねえと言ったけど・・・おらはそうは思わねえ これから百姓やるにも大工になるにもやっぱし学問は必要だ」この母の言葉で矢口少年の進路が「進学」へと大転換する。
 この場面、大好きで何度も読み返します。
 今でこそ、みんな高校に行ける時代になりました。でも、大学はどうでしょうか?4年生大学を卒業させようと思えば、1000万、2000万は平気でかかってしまう。学費、生活費が重く家計にのしかかってくる。進学の悩みは、矢口少年の時代とほとんど変わらない、もしかしたらもっと大変になっているんではないでしょうか。

馬場秀幸  カテゴリー:その他