雪の街だより 高田在住の弁護士馬場秀幸のブログです

9月18日 ブレイデイみかこ「ワイルドサイドをほっつき歩け」その2

2020.09.18

 ダニーは、妹のダウン症の息子にその遺産の多くを渡していた。しかし、ダニーの恋人は納得しない。ダニーの妹に向かってダニーの遺書を見せろ、彼は私にもっとお金を遺したはずだと言って、弁護士事務所に勝手にに乗り込んだ、というのだ。
 ダニーの1周忌「アニバーサリー」にみかこが参加した。妹や遺された遺族がダニーを偲びながら、ダニーの死後の若いベトナム人女性との苦々しい出来事も回想する。そして、まさに同時に今はベトナムに戻った女性からみかこの携帯にメッセージが届く。妹たちのベトナム人女性に対する嫌悪感、他方でみかこはベトナム人女性の置かれていた境遇に同じ立場の移民として思いを馳せる。しんどいことを綴るけれど、決して憎しみや悲しい話で終わらせずに対象を暖かく包み込んで書き上げるのがみかこのペンの力である。
 ところで、私も同じような事件に遭遇したことがある。日本人の男性には結婚した外国人女性がいて女性は事情があって自国にいたままだった。男性が死亡した後で遺産をめぐり争いが起きる。男性の日本側の遺族は結婚が偽装だったなどと言っていた。しかし、実際は女性を連れてきたくても、日本の親戚がそれに反対し、男性は女性を日本に連れてくることができなかっただけだった。結婚を理由に遺産を持って「いかれてしまう」という嫌悪感。みかこが描いたダニーの場合と共通性があるのだ。
 日本も既に本格的に外国人労働者を受け入れる。今のイギリス社会は10年後の日本社会なんだろうなあと思いながら、みかこの本を読んでいる。

馬場秀幸  カテゴリー:書籍