雪の街だより 高田在住の弁護士馬場秀幸のブログです

9月21日 米国の人口妊娠中絶違法の判決

2022.09.21

 米国の連邦最高裁が、今年6月、人口妊娠中絶について重く厳しい判断を下した。中絶を憲法が保障する権利として認めていた1973年のロー対ウエイド最高裁判決を覆した。今後は州ごとに中絶を禁止・規制することが認められる。
 ただし、州によっては、女性が妊娠をしたと気づく頃に既に中絶を認めないとする厳しい規制をとるところもあるという。
 そうなると、中絶に厳しい規制をとる州に居住する女性は、中絶を認める州に移動して処置を受けるほかなくなる。しかし、これは経済的余裕のある女性に限られる。貧困層がさらに窮地に追い込まれる。また、望まぬ妊娠を選択によって、女性の社会進出が妨げられてしまうことになるのではないか。
(日本の場合)
 日本の場合には、母体保護法がある。人口妊娠中絶は、「胎児が母体外において、生命を保続することのできない時期に、人工的に胎児及びその付属物を母体外に排出すること」とされ、中絶ができるのは、①妊娠の継続または分娩が身体的または経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれのあるもの、②暴行もしくは脅迫によって又は抵抗もしくは拒絶することができない間に姦淫されて妊娠したもの(14条1項1,2号)に限られる。ただし、中絶を担当する医師に調査・確認義務は課されていないとされており、人口妊娠中絶は事実上容認されている。
(どう考える?)
 国でこんなに違うものかと驚くばかりだ。仕事柄、妊娠中絶をしたほうがいいのかどうかという相談を受けることもある。胎児といっても生命体である。軽々しく中絶すればいいみたいなことを言うことはきでない。しかし、ずうっと交際をしていたのに、女性が妊娠したことを知って突然女性から離れる冷淡な男がいるのも事実である。また、女性側の家族でも、世間体を気にする親もまだまだ多い。そして、仕事がない女性であれば、親が支援してくれないのに生んだとしても、苦しい生活を余儀なくされることも予想される。四面楚歌の状況においても、妊娠を強制されるのは社会は、女性を窮地に追い込むだけである。中絶が権利なのかどうか私にはわからないが、経済的社会的な理由で妊娠中絶をする選択を認めてあげるべきなのだろう、と思う。

馬場秀幸  カテゴリー:仕事