雪の街だより 高田在住の弁護士馬場秀幸のブログです

9月27日 今日は国選刑事弁護の話をします。 その2

2021.09.27

 刑事事件の多くは自白事件で、その場合の弁護士の仕事は情状弁護です。検察官の主張する公訴事実は争わないが、被告人にも様々な事情があるから、それを斟酌して判決してほしいと裁判所に訴えるというものです。
 難しい仕事ではないですが、被告人質問では被告人本人の真摯な反省をアピールすることが重要な仕事かなあと思っています。この被告人質問というのは、もしかしたら、被告人が自分がしてしまった事件を顧みる唯一の大切な機会かもしれません。というのも、被告人の言い分を聞くのは、自分の将来を左右する力を持っている裁判官です。緊張しないはずがない。また、裁判を離れてしまえばなかなか自省する機会もないものです。
 そして、質問をするのは、弁護人、裁判官、検察官、質問は、反省とはどうしなければならないのかを考えさせるものにしなければなりません。そういう意味では、一つ一つの質問も、吟味されたものでなければならない。そう思います。
 例えば、女性を殴った男が暴行罪の罪で問われたとする。男性に二度と暴行をさせないためにはどのような質問がいいのだろうか?
問 どうしてその女性を殴ったの?       答 イライラしていたから。
問 イライラしたら相手を殴っていいのですか? 答 それはよくないと思います。
問 どうしてよくないのですか?        答 その女性が殴られる理由がないから。
問 殴られる理由がないってのはどういうこと? 答 人権があるということでしょうか。自分も殴られたらイヤですし。
問 人権は学校で教えてもらえなかった?    答 教えてもらいました。
問 じゃあ、どうして殴ってしまたtのだろう? 答 殴った時は、女性の立場なんて考えていなかった。
問 どうしたら考えるようになれるだろうか?  答 ???
 こんな問答を考えます。
 そして、問答を考えるうちに自然にわが身を振り返る。自分は「女性の立場」を考えたことあったっけ?
 相手の人格、人権を重んじる姿勢があれば、イライラしていたって殴ることはないだろう。じゃあ、そういう姿勢はどういう場所で身につけることができるのだろう?家庭、それとも学校?自分はどこで教えてもらっていたのか?なんてことを自問自答するのです。だから、まあ、刑事弁護もおもしろい。
 

馬場秀幸  カテゴリー:仕事