刑事弁護人としての履歴 その2
刑事事件で争った2件目は保険金殺人事件だ。金融機関の職員が、顧客の債務を顧客の生命保険で返済してもらうことを企てて、知人を使ったその顧客を殺害したというものだ。私は、その職員の弁護人になった。いわゆる共謀共同正犯だ。手を下していないのに犯罪の責任を負わせられるというものだ。
この事件は結局高裁まで争ったが、有罪だった。いろいろと後悔が残るものだった。例えば、もっと足繁く通えば、被告人には不利調書など作られなかったのではないかとか。
他方で刑事事件のひどさもわかる。共犯者である知人が金融職員から指示を受けたというのだが、職員は指示していないという。しかし、裁判所は共犯者の供述の信用性を肯定して有罪にしたのだ。共犯者の供述に重きを置く司法判断に疑問をもった。
とにかく足繁く接見に通う。被疑者と話をする。被疑者に不利な調書は作らせない。という刑事弁護の基本を学んだ。