望月衣塑子『新聞記者』(角川新書)を読む。その2
一人の記者が何回も質問すると他の記者が質問できなくなったり、定例会見がなくなったりする。それが困るというのが記者クラブの「総意」だと言われたのだ。また、あるときは、朝日新聞社の南彰記者が挙手をしていたにもかかわらず、幹事社の記者が記者会見を打ち切ったこともあったという。
同じような話を最近聞いたことがある。おしどりマコさんだ。マコさんは原発事故後、真実を知りたくて東電の記者会見のネット中継を見ていた。まともなことを聞く記者は何度も手を上げるがなかなか指名されない。指名されて質問をしても、他の記者から「そんな質問するな」と批判されたりした。そういう光景を目にしてその記者に加勢しようとしてマコさんは東電の記者会見場に通うことになったという。仲間と思っていたはずの人たちから叩かれる。政権中枢への忖度という毒素は、国民の知る権利に奉仕するはずのマスコミにまで恐ろしいほどにいきわたっている。
それでも、希望は、望月記者を助けようとする記者たちが現れたことだ。朝日新聞社の南彰記者。ジャパンタイムズの吉田記者。そして、彼女自身も成長する。スクープをほしいというのは確かだが、1社単独よりも複数で疑惑を追求するほうが、効果がはるかに大きいときもあるという。「紙と電波、あるいは新聞と雑誌といった垣根を飛び越えて、メデイアが横方向でつながっていくことが状況によっては必要なのではとの考えは、安倍試験になってさらに強くなった。」という。
空気はあえて読まない、と彼女はいう。小さなスクラムが彼女たちを先頭にした大きなデモもの隊列になっていく、そんな日が来てほしい。