1月21日 少しいいことしたかもしれない。
「ボク、どうしたらいいでしょう?」
なんか自信のなさそうな声が電話口から聞こえてきた。数か月前に私が国選で弁護を担当した若い男性の被告人からだった。
通常、刑事事件での弁護人の仕事は、判決が下されればそれで終わる。特に国選弁護人であれば、被告人から依頼を受けたわけでもないので、判決後にも関係が続くということはまずない。
ただ、彼の場合はその後の彼の生活が心配だった。軽い精神障害もあり、職に就けるのかどうかとか、家族とうまくやっていけるのかどうかとか心配だったのだ。
それで、執行猶予の判決の後、新年でもあったので年賀状を送った。「何かあったら連絡してね」と添え書きをしておいた。お返しなんて期待していなかったし、何も連絡のないことはいいことだと思ったら、電話が来てしまったのだ。
聞けば、停車中の車に後ろからぶつけてしまったとのことだった。幸い、相手にケガはないようだ。
「現場から離れないで。とにかく警察を呼んで、警察の指示にしたがって。それから、相手にはきちんと謝ることをしなくてはダメだよ」とアドバイスした。その後どうなったか連絡はきていない。とりあえず、少しいいことしてあげたかもしれないと思った。