雪の街だより 高田在住の弁護士馬場秀幸のブログです

1月22日 長期評価

2023.01.22

 過失責任というのは、結果発生を具体的に予見できたにもかかわらず、結果の回避を講じなったという場合に認められる。
 福島原発事故に関連する損害賠償事件や刑事事件でいずれも問われているのは、その事故当時において、津波による過酷事故の発生を国或いは東京電力が具体的に予見できたかどうかということである。
 2002年に国が公表した予測がいわゆる「長期評価」というものだ。我が国の専門家が集まって作成されたもので、「三陸沖から房総沖のどこでも大きな津波地震の可能性」があることを予測した。国の専門家が作成されものだから、権威を重視する裁判所であれば、普通はその報告内容を信頼に値するというはずだ。
 それが、どうも違う。昨年の株主代表訴訟では、「長期評価」を信頼できる情報として東電の代表者たちに13兆円の損害を支払えとする判決が出された。その一方で、今回の東京高裁判決は、「長期評価」必ずしも信頼できる情報ではないとして具体的な予見可能性を否定して3人の経営者いずれも無罪とした。原発事故の被害者にしてみれば、何で裁判官でこうも真逆の結果になってしまうのか、裁判所への不信が募るのも当然といえる。
 私の家族はこう言った。「『日本沈没』っていう科学小説があるくらいだから、プレートがぶつかって地震が起こることくらいみんな予測できて当然だったんじゃないの?」これが素人感情だ。そんな簡単に結論が出る話ではないんだぜと言いたいところだが、結構、的を得ているのかもしれない。地震多発の日本で本当に原発大丈夫なんだろうかって誰もが不安に思っていたんだから。
 

馬場秀幸  カテゴリー:仕事