2月11日 野村克也著『あぁ、監督』(角川oneテーマ21)
小学生の頃、同年代の多くがそうだったようにプロ野球選手に憧れていた。その頃、親に頼んで買ってもらったプロ野球紹介本に野村克也さんのことが書かれていた。京都峰山高校卒。新聞配達をしながら家計を支える。テスト生で南海ホークスに入団。毎夜醤油の一升瓶に砂を詰めてそれを振っていたというエピソードが書かれていた。王や長嶋と言ったスター選手とはまったく違う人生を歩んだ人だった。
知人があるとき、野村監督の講演を聞いたけれどおもしろかった、と言っていた。
それがきっかけで読んだのが「あぁ、監督」(角川oneテーマ21)だ。この本は面白かった。監督論が書いてある。これは経営者論に直結する。しかも、その書き方がもう直截で遠慮がない。自分の主観的感情を交えて先輩や後輩を容赦くなく批評している。例えば、古田は監督としては失敗した。なぜか。一つはお友達内閣を作ってしまったから。もう一つは彼の性格。スター選手だったために自分中心の考え方をする。「周囲に対する感謝の心が足りない。私に年賀状1枚送ってこないことがそれを象徴している」と遠慮容赦がないのである。
私がなるほどと思ったのは「監督は選手と距離を置くべき」というものだ。南海の鶴岡一人監督は子分を作るのが好きだった。正月にも、鶴岡監督の家には子分が集まってにぎやかに酒盛りをしていた。野村監督は前妻を連れてあいさつに行ったが、上がれとも言われなかった。子分をつくると派閥ができる。選手たちもその中では結束する。しかし、そこに入れない選手はおもしろくない。そこからチームが崩壊する可能性が高い。
だから、コーチや選手とは一線を画してきた、という。
示唆に富むことが多く書かれている。特に経営者には参考になるはずだ。