2月11日 高田世界館で「82年生まれキム・ジョン」を観る その2
キム・ジョンは時々別人になる。
それを心配したジョンの母親がジョンのマンションを訪れて、憔悴したジョンを見て呆然としジョンにわびる。すると、ジョンは祖母になって、母親に対して、男の子のためにおまえには十分な教育も受けさせずに働かせてしまったと詫びを入れる。母親はそれをみてなおさら切ない思いに駆られていく。母親がジョンに、そして ジョンの体を借りた祖母が母親に対して謝罪をするこのシーンは、根深く続く男中心の韓国社会をストレートに鮮やかに映し出して圧巻であった。
映画の中の男たちも決して憎めない。ジョンの弟は心の折れたジョンのためにジョンが欲しがっていた万年筆をプレゼントする。ジョンの父は、妻から長男のことばかり大切にしてきたと非難され、ジョンのために漢方薬を手に入れようと勤務先の社長に電話する。いずれの人物も、その行動がその時代の固定的観念に縛られながらも、ジョンとのかかわりを通じてその考えを少しづつ変えようとしていく。こういう一人一人の意識の変化がやがては大きな潮流になるのではないだろうか?