6月22日 トントントン!生きてますか~!?
債務整理の依頼者(70歳)と連絡がとれなくなって2年が経とうとしていた。
半年前に離れて住むお兄さんに電話したら、「弟は階段から落ちて半身が動かず今はほぼ寝たきりの状態。少し認知も入ってきたかも」と言っていたので、ついつい本人には連絡もせずにいた。そうしたら、今度は債権者が、債務整理はどうなっているんだと言ってきた。彼に電話をしても電話に出ない。仕方ないので、家を訪ねることにした。
彼の自宅は、昔の城下町の職人町の並びにあった。昔は活気があったのだろうが、今は静かである。ブザーを鳴らしたが出てこない。寝たきりだもんなあ~とあきらめてドアに背を向けて帰ろうとしたら、「何ですか~」という声がした。上半身裸で下はステテこ姿の老人が立って私に声をかけていた。「弁護士の馬場ですが、覚えていますか~?」と言ったら、「なんとなくねえ」なんてとぼけられたが、中に入れてもらえた。
たしかに、階段から落ちて一時は寝たきりだった。ただ、リハビリを続けて今は何とか歩けるようになった。たまに、娘が来てくれて身の回りの世話をしてくれる、という。彼の部屋は、老人の一人暮らしの割にはきっちりと整理がされていた。会話は自然で認知症の症状はない。布団の脇には写真アルバムが置かれていた。家族との思い出の写真なのだろうか?とにもかくにも、彼の無事を知ることができてうれしくなり彼と一緒に大笑いした。そして、自分の無沙汰をわびた。
彼には交通の便がない。私がまた彼の自宅に来ることにした。ただ、電話がないのでいつ来ますとも伝えられない。手帳を開いて空いていた予定時間を見つけ出し、彼が予定表替わりに使っていたカレンダーに「弁護士馬場来る、打ち合わせ」と書き込んで「またね」と言って帰ってきた。