6月29日 親父さん、生きてるかい?
6月22日の約束通り、依頼者の自宅を再訪した。親父さんは元気だった。
部屋に入る。この前も書いたが、老人の一人暮らしの割には部屋が片付いている。加齢臭もない。なんでなんだろう?
早速、仕事にとりかかる。
預金通帳を見せてほしいと伝えた。預金通帳をみれば、収入や支出が大体わかる。ところが、親父「娘が持って行ってしまった」という。娘はたまにしか来ないらしい。娘の電話番号を聞いたが、娘は親父の電話にもでたことがないという。先行きが思いやられる。
何か破産の申し立てに関連する資料は他にないかと家探しをする。布団の周りに督促状や年金通知などがちらばっていた。押し入れの前に壊れた机の引出の箱があり、そこには数年前までの確定申告の書類が置かれてあった。
その後、親父から話を聞いた。地元の高校を卒業して長野県の会社に就職した。数年後に帰ってきた地元の設備屋に転職。その後、設備屋として独立。申告書をみると、数年前まではそれなりの売り上げがあった。病気になって仕事が辛くなり売上も急減したという。
「なんでこんなになっちまったんだ?」とぼやいているが、それでもたまに兄貴が心配してコメを持ってきてくれる、たまに娘も来てくれるという。こういう繋がりが不思議とこの人の気持ちを平穏にさせてくれているのだろう。
「ちょっと待ってて」と言って台所に行った。「コーヒー飲むかい?」と言って缶コーヒー一つをみやげにくれた。
彼には電話がないので、また来る日をカレンダーに書いた。
この仕事、結構時間がかかるかもしれない。