雪の街だより 高田在住の弁護士馬場秀幸のブログです

「82年生まれ、キム・ジョン」のその後

2019.12.26

 以前、韓国の小説「82年生まれ、キム・ジョン」を10月12日付の「雪の街だより」で紹介した。女性が日常で経験する差別を淡々と描いた小説である。
 朝日新聞の特派員メモによると、この小説はその後映画化され、韓国では観客360万人超えのヒット中だという。その一方で韓国の男性から「女性は兵役の義務もなく、その間自分を磨けるのに、差別を訴えるのは腑に落ちない」といったあからさまな不満も聞かれ、男性だって差別を受けていると反論する「82年生まれ、キム・チョルス」という新語まで登場した、という(朝日新聞2019.12.16)。政治の分断のみならず「男と女」という新たな分断もまた深刻だという。
 たしかに深刻なのだろうが、そういう不満が社会に露わにでるだけでもボクはうらやましい。同書を読んでいると男性の行動に対する女性の目が繊細な視点で書かれていることにはすごく共感を覚えるが、男の立場から言うと、ここまで言わなくてもいいじゃないと思うところもあった。おそらくは男の視点で弁解を書けば一つの本になるかもしれない。本にならないまでも男がそういう形で反発をするのは感情が表に出るという意味で出ないよりはいいだろうと思うのだ。
 翻って日本はどうなのか。医学部入学試験にあからさまな男女差別があるのに、どうして憤りが顕在化しないのだろうかと思う。2019年のジェンダーギャップ指数は、日本が121位⤵(前年は110位)、韓国が108位⤴(前年115位)と日本と韓国とが逆転した。
 隣の芝生がうらやましいとは思わないが、差別を許さなく激しくやりあう韓国の人たちの行動も見習うところがあるのではないかと思う。

馬場秀幸  カテゴリー:その他