雪の街だより 高田在住の弁護士馬場秀幸のブログです

亀石倫子 新田匡央「刑事弁護人」を読む 。 その2

2019.08.22

 さて。亀石弁護士が接見室で被疑者との信頼関係に気配りを示しても、たいていの被疑者は一瞬、失望の色を浮かべる、という。
 「あ、女か」「たよりなさそうだな」「若いから、たいして事件(の弁護)をやっていないだろう」(同書28頁)。

 そうなんだ。女性というただそれだけでそういうことがあるんだあということに気づかされた。ちなみに自分は結構手ごわい女性弁護士に悩まされることが多く。「たよりなさそうだな」と思ったことはない。
 「若いから」たよりなくみられる。これはわかる。自分もそう思われたことは何度となくあった。また、田舎で街弁をしていると、よく都会の専門分野で活動している弁護士と比べられて切ない思いをすることもある。
 
 それはともかくとして、一瞬の依頼者の困惑に対して、亀石弁護士は、「初対面で失望されても仕方がないと思っている。男社会の弁護士業界、そして、被疑者・被告人も圧倒的に男性が多い。困惑や失望はむしろ当たり前、そこから挽回できれば問題ないと思っている」(同書29頁)。
 
 たしかにそうなのだ。私たちの法曹界は、「男だから」「ベテランだから」勝てるという世界でもない。法廷に立てば、男も女もなく、ベテランも若手も関係ない。皆弁護士という立場で対等になる。頼りになるのは自分の力だけ。亀石弁護士のような若手でガッツのある弁護士が次から次へと登場することによって法曹界も男とか女とか関係なく、先輩後輩なんて関係ない「風通しがよくておもしろい業界」になっていくんではないかと思う。自分も若くはないがまだまだ頑張る頑張れると思いたい。この本を読んでそう思った。

馬場秀幸  カテゴリー:仕事書籍・映画