雪の街だより 高田在住の弁護士馬場秀幸のブログです

収賄罪捜査を自分なりの視点から考えてみる

2020.01.02

 収賄罪というのは、大雑把に言うと、公務員が職務の対価としてお金を受領することを処罰するというものだ。だから、捜査機関は、お金の流れを立証しなければならない。しかし、お金を渡す側もお金を受け取る側もそれを知っているから証拠を残そうとしない。とにかく現金を人から人に渡して、請求書や領収書なんて遺さないようにする。
 民事裁判の場合、お金が動いたという客観的な証拠(契約書、請求書、領収書や預金口座の履歴など)がないとなかなかお金が動いたという事実を立証できない。しかし、刑事裁判の場合は、そういう客観的証拠がない場合でも有罪認定をする場合がある。関係者の供述を録取した警察官や検察官の供述調書に裁判官が信用性を認める場合だ。だから、捜査側は関係者の具体的な供述を獲得するために血眼になる。しかし、捜査側が「何としても立証する」と意気込めば、関係者の供述を創作する可能性も生まれてくる。冤罪の危険も出てくるのである。
 収賄罪、公職選挙法の買収罪がいろいろ争われたり、無罪事例が時としてあるのは、こういう背景があるからだ。だから、被疑者が否認をしているといっても何もおかしくはない。もしかしたら本当に無罪かもしれない。こんな感じで、自分としては冷静に推移を見守りたい。

馬場秀幸  カテゴリー:仕事