雪の街だより 高田在住の弁護士馬場秀幸のブログです

1月5日 拘置所で被告人に接見

2023.01.05

 拘置所に勾留されている被告人(一応「傷害罪」としておく)から接見要請がきた。明日が判決である。
 検察官は、論告で、実刑を求めてきた。そのため、彼は、ずうっと不安だったのだろう。そこで、接見に行ってきた。雪もやんでいた。
 彼は、勾留期間中もそうだったが、起訴されてからもしばらくの間、私が接見に行ってもまったく話をしてくれなかった。何でなのか不思議でならなかった。
 最近、彼は私にしゃべるようになってくれた。理由を聞いたら、そのころはもう死にたくてどうでもいいと思っていた、と言っていた。その後、勾留している最中に同房の仲間と話をしたり、面会に来た親と話しているうちにこんなことではいけない、と思ったらしい(ああよかった)。
 ただし、被告人質問の直前まで自ら私に話さなかったこともあった。彼は、高校を卒業して地元の小さな会社で働いていたが、そこでの上司や同僚らからパワハラを受けていた。彼は働くことがイヤになり会社をやめて、そのまま家出をして長野県まで行った。お金の尽きたところで死ぬつもりだったという。この話を、被告人質問をする前日になって、私は初めて父親から聞かされたのだった。供述調書にも何の記載もなかった。
 どうして、パワハラや家出のことを教えてくれなかったのかと聞いた。彼は、自分がもともとADHDで小さいころから周りになじめず衝突やいじめを受けてきた。そんな会社のパワハラのことなんて自分にとっては大した意味がないと思っていた、と言った。
 彼の事件の被告人質問、決して褒められたものではなかった。もう少し、彼の成育歴や発達障害のことを知っていたらもう少しまともな弁護活動ができたのはではないかと思った。それを正直に彼にわびた。
 検察官の厳しい求刑。弁護人のやや貧弱な弁護活動。明日はどんな判決になるだろう?

 

馬場秀幸  カテゴリー:仕事