雪の街だより 高田在住の弁護士馬場秀幸のブログです

10月27日 時効の制度 その2 割り切れなくて当然。

2022.10.27

「20年以上前の性被害 訴え棄却 父への賠償請求権「消滅」広島地裁判決」(朝日新聞2022.10.27)

 女性は、実の父親から小学4年生のクリスマスの日の夜に姦淫され、明確に拒否できるようになった中学2年まで姦淫行為が続き、性的虐待を受けてきた。女性は2020年に父親を訴えた。
 父親は訴訟で、性的行為をした事実を認めたが、最後の性的行為から20年たち、「除斥期間」が経過したとして女性の請求の棄却を求めた。
判決は、父親に損害賠償責任を認めたものの、除斥期間が経過したことによって請求権が消滅したとして、女性の請求を棄却した。
 
 除斥期間というのは、不法行為から一定の時の経過により法律関係を清算してしまう制度である。具体的には不法行為から被害者が何の請求もすることなく20年経過した場合には、請求権を失効させてしまうのである。まあ、時効と似たようなものだ。
 
 さて、この判決、どう考えますか?
 最後の性的虐待が中学2年のとき。明確に拒否することができたとしても、親を訴えることなんて考え着くまでに何年かかったことだろう?被害を周囲にだっていうことにすら時間がかかったかもしれない。
 法律家から、それは虐待なんだと言われたり、訴えることができるとか聞かされても、実の父親を訴えることがいいのかどうか逡巡する。正直、実の父親がしたことは鬼畜の所業だ。こんなことにまで時間が解決してくれといって除斥期間をすんなり認めていいのだろうか。

 女性は控訴する意向だという。

馬場秀幸  カテゴリー:仕事