雪の街だより 高田在住の弁護士馬場秀幸のブログです

12月6日 被疑者国選弁護制度

2020.12.06

 今日は日曜日だ。知らない電話番号で電話が鳴っていた。出てみたら法テラスからだった。被疑者国選弁護人の依頼であった。私は、日曜日の当番だった。それを忘れていた。
 刑事事件の弁護人には国選弁護人の制度があった。弁護人がいないままに刑事判決を受けてしまうことは冤罪を生む原因となる。そこで、国が被告人に弁護人を付ける制度が国選弁護人の制度であった。
 ただし、起訴された後に弁護人をつけても冤罪はなくならないという批判がされてきた。なぜなら、冤罪を生む原因となる自白は、起訴される前の捜査段階で自白調書が警察の手によって作成されてしまっていたからである。
 そこで、弁護士会は、当番弁護士という制度をつくった。被疑者が逮捕された段階で被疑者からの要望があれば、その日の当番だった弁護士が24時間以内に被疑者の下に駆けつけて接見を行うというものだった。これに係る経費は、すべて弁護士会所属の弁護士の拠出金で賄われている。
 弁護士会は、当番弁護士の制度を軌道に乗せて、国にはさらなる要求をつきつけていった。それが被疑者国選弁護制度である。つまり、被疑者段階で弁護人を国がつけるというものだ。これは、一連の司法改革制度で初めて実現をみた。当初は被疑者国選をつける事件は限定的であったが、改正によりその対象も拡大されてきた。だから、最近では多くの事件で国選弁護人がつけられるようになり、当番弁護士の出番は少なくなりつつある。

 この国選弁護の制度に加わるかどうかは義務ではない。一人一人の弁護士の判断にゆだねられている。弁護人の選任があれば、被疑者段階では必要に応じて接見に出向かざるを得ず、他の日常業務をする時間が奪われる。なので、多忙な弁護士は敬遠しているようだ。
 自分も結構しんどい事件に当たってしまうと、そろそろやめようかなあなんて弱気になっている。

馬場秀幸  カテゴリー:仕事