雪の街だより 高田在住の弁護士馬場秀幸のブログです

2月15日 高田世界館で「82年生まれ キム・ジョン」を観る その3

2021.02.15

 映画と原作との違いについて。
 誰かの感想にもあったが、原作では、キム・ジョンを取り巻く男性(夫や、父親、弟)はすべてジョンの傍観者でしかなかった。しかし、映画ではジョンの病気に関わりジョンを気遣い自分を顧みる当事者になっていた。そのため、原作では関係する男がいずれも冷たい人間で男である自分にはなんだか救いがなかったが、映画では、男たちが男性優位の社会や観念にどっぷりつからながらも、ジョンに寄り添う中で今までの考えや態度を改めようと試みる。そういうところではかすかな希望を抱かせてくれた。   
 映画が原作と違うものになってしまったという見方もあるかもしれないが、そこは論議のあるところだろう。私は映画に登場するジョンの弟に共感した。だから、素直にいい映画であったと評価したい。
 ジョンの弟は、彼を他の姉妹よりも大事にするという家庭でその恩恵をそのまま受けていた。それでもジョンが再就職をしようとしながら義母の反対に遭って断念し心が折れてしまったとき、彼女を気遣い、彼女が欲しがっていた万年筆を渡したり、彼女の好物と「思われた」あんパンを差し入れる。その心遣いの描写がとてもやさしい。
 私も男性優位の社会の中でどっぷりつかりその恩恵を受けてきた(同世代の男性の多くは自分と似たりよったりではなかったかと思う)。実家を継ぐのは男性のおまえだと周囲から言われ、責任感を植え付けられると同時に姉たちとは違う様々な便宜を受けた。大学進学ができたのも兄弟姉妹の中では私一人であった。そういう家庭の中で、姉からは「なぜおまえだけが特別な扱いを受けるのか?」と言われたこともたびたびあった。しかし、そう言われても、そりゃあ当然でしょくらいの感覚しか当時の私にはなかった。鈍感だったのだ。
 ただ、そうは言っても、年月を経てそれなりに大人になり結婚し、女の子も授かった。少しは自分も変化する。生活の様々な場面で当たり前だったことのおかしさに気付き、少しでも自分の行動を改める。そして、生まれてきた女の子たちには、この子たちが活動しやすい世の中になってほしいと願う。その繰り返しである。
 そして、その繰り返しが少しづつ拡大されて大きくなって世の中が変わると思っている。そういうことに気付かせてくれたこの映画は、ホントにいい映画だと思っている。

馬場秀幸  カテゴリー:書籍・映画