雪の街だより 高田在住の弁護士馬場秀幸のブログです

4月6日 「安倍やめろ」は憲法によって保障される「表現の自由」!

2022.04.06

(今日は、まじめなお話です)
 2019年7月の参議院選挙、当時の安倍首相が札幌駅前で応援演説をしていた際、一人の男性が安倍氏に「安倍やめろ」とヤジを飛ばしたところ、警察官らに排除された。「増税反対」と叫んだ女性(26歳)も警察官に場所を移動させられたうえ、警察官らに長時間つきまとわれた。この男女は、北海道警の違法に排除され、表現の自由を侵害さられたとして、北海道に慰謝料を求めて提訴した。札幌地裁は、本年3月25日、原告らの訴えを認めて男女に合計で88万円の支払いを命じました。
(ボクはこんなこと考えました)
「安倍やめろ」「増税反対」というヤジは単なるヤジなのか?それとも社会的に意味のある表現行為なのか?どっちの評価をするのかというのが、結論の分かれ目だったと思います。
 単なるヤジだとなれば、演説行為の妨害行為としか評価されない。他方、ヤジも演説行為をしている政治家に対する意見表明だと考えれば、別の評価も可能となります。判決は、➀原告らの「安倍やめろ」「増税反対」は憲法によって保障される政治的表現行為であるが、➂それを排除した警察官の行為は、原告らの表現行為が街頭演説の場にそぐわないと判断し制限したものであり違法である、と判断しました。つまり、原告らのヤジが憲法上の保障に値する表現行為と考えたのです。
 演説会の現場も、決して政治家から国民への一方通行の意見表明の場ではない、批判的なヤジによって国民の意見が政治家に伝わるという双方向の言論の場であると判決は考えたのではないでしょうか?主権が国民にある以上、国民の意見表明の自由は保障されるべきであるし、政治的表現の自由は、特に重要な憲法上の権利として尊重されるべきです。判決は、この憲法上の原則にしたがって原告らのヤジにまっとうな評価を与えたものといえます。

 
 

馬場秀幸  カテゴリー:仕事