雪の街だより 高田在住の弁護士馬場秀幸のブログです

5月27日 綾瀬はるかの『元彼の遺言状』 いいかげんな和解はしてはならない

2022.05.27

 『元彼の遺言状』第7回目。
 剣持麗子が前に所属していた大手弁護士事務所のボス弁津々井(浅野和之)が痴漢容疑で逮捕された。麗子が津々井の弁護人になったが、捜査が進展する中で、被害者の女性がその男性弁護士に恨みを持っていてい、電車で偶然その彼を見かけて陥れようとしていた冤罪事件だったということがわかった。
 女性は、どうしてそんな痴漢事件のでっち上げを思いついたのか?
 女性は、もともと、津々井が顧問をする会社の従業員だった。その会社が従業員の大量解雇をしようとした際、その女性も含めた従業員が会社に解雇の撤回を求めて裁判になった。会社と従業員との間で最終的に和解が成立した。その和解の内容は、解雇はするが、会社は責任をもって従業員に対して就職先をあっせんする、というものだった。
 しかし、和解成立後に、会社が従業員にあっせんした就職先というのは名ばかりで、北海道だったり九州だったりという遠くの地域ばかりで現実的な内容ではなかった。そこで、女性はそのいい加減な和解を成立させた会社の代理人であった津々井のことを恨みに思い、彼を電車で見かけて陥れてやろうと思った、というのだった。
 
 この話、重く受け止めました。和解も、当事者がうっかりしていると、弁護士が変な内容の和解をしてしまうこともある。気を付ける必要があるんです。この話のように、将来的な約束事や抽象的な約束事の場合には、「そんなはずではなかった」と思うことがあります。このドラマの場合も、女性は、「その会社と同じような条件の転職先を会社はあっせんしてくれるはずだ」と思って和解案を受諾したと思うんです。和解内容については弁護士も誠実に説明することが必要ですし、依頼者も弁護士まかせにしないようにすることが必要です。
 それにしても弁護士の痛いところをついているなと思ったら、「元彼の遺言状」の作者新川帆立さん、現役の弁護士さんだったんですね! ツボがわかっていると納得しました。

馬場秀幸  カテゴリー:その他書籍・映画