雪の街だより 高田在住の弁護士馬場秀幸のブログです

5月30日 少年法の適用年齢引き下げは賛成?反対?

2020.05.30

 少年法の適用年齢を20歳未満がから18歳未満に引き下げる改正案に対し、元裁判官177人が連名で反対する意見書をまとめた。
 少年法の適用年齢引き下げは、2017年2月から法制審議会で議論されてきた。しかし、賛成、反対でまとまらず現在にもまとまった結論が出ていない。政権与党も、引き下げるべきだとの意見でまとめようとしたが、公明党が強硬に反対。今年になり「桜を見る会」で政治も混迷したために、議論が遅れている状況だ。
 この間、各県の弁護士会の連合体である日弁連が引き下げに反対、家裁調査官OBで反対の声を上げる人もいたが、法制審議会に関わってきた最高裁は意見を述べず沈黙を保ったままだった。なので、元裁判官とはいえ、現場を知り尽くした実務家たちの意見書は反対論にとって心強いものといえる。
 
 私は少年法の適用年齢引き下げに反対だ。
 少年の非行事件は、一般の刑事事件とは異なったプロセスになる。少年の非行事件は家裁に送られて家裁がその手続きの主宰者となる。事件の中でも、問題のある少年には観護措置が取られて少年は鑑別所に送られる。鑑別所では少年の生活や発達の程度、非行の状況、家庭環境が調べられることになる。そして、少年審判では審判官が少年を更生させる観点から審判をする。更生の観点から少年院送致という思い決定もあるが、少年院は刑務所ではない。少年院では勉強の機会が与えられ、内省といって自分と向き合う時間が与えられる。つまり、少年法は、少年に罪の償いだけではなく生き直しの機会を与える場を保障してくれている。社会が個々の少年の生き方に世話焼きをするシステムである。
 そもそも個々の非行や犯罪の原因は生育環境や教育などが複雑に絡み合っていて自己責任に帰することはできない。そして、少年には可塑性、自分を変えることの柔軟性がある。社会がその少年の立ち直りに関わる必要性・合理性は十分あるといえる。その具体的な仕組みが少年法というシステムである。そんなステキなシステム、意味もなく縮小する必要はないと思う。
 
 
 

馬場秀幸  カテゴリー:仕事