雪の街だより 高田在住の弁護士馬場秀幸のブログです

9月14日 自営業者の涙

2020.09.14

 自営業者の男性に泣かれた。
 もう70を過ぎて高齢だ、新型コロナウイルスで売り上げも減った。そこで、店を閉めると銀行に伝えた。そうしたら銀行から、店の建物を売却してほしい、売却して債務が残ったら、子どもさんが引き継ぐことになるかもしれない、と言われたそうだ。それで心配になり相談に来た。
 話を聞くと、既に子どもの家で生活をしているようだ。そうであれば、破産の覚悟さえしておけば心配ない。売却価格が債務よりも低ければ債務が残ることになれば破産・免責を受ければいい。子どもさんが引き継ぐというのは不正確で、それは自分が死亡をして相続をした場合のことだと訂正してあげた。その場合も子どもさんが相続放棄をすれば債務を引き継ぐことにはならないから心配するな、以上のようなことを話してあげた。
 繰り返し説明をした。男性もようやく理解してくれたようだった。安心したらしく「わかりました」と言った後、初めて笑ってくれた。それからうつむきながら涙を流された。親から家業を引き継いでずうっと地元で頑張ってきたという。親の借金も返済してきた。最後に残ったこの借金だけが気がかりで子どもに負担をさせたくもないと思っていた、という。涙は、長年の借金という重荷から解放された安堵によるものだったのだろうと思う。
 何度かこういう涙をみてきた。多くの小さな自営業者は人生の大半を借金という重荷を背負いながら生活をしている。今リタイアを考えている方々は、バブルがはじけて以降本当に大変な思いで借金返済の重圧、売上の減少などに悩んできたのではないだろうか。
 「長い間お疲れ様でした」後はもう少し笑って余生を過ごしていただけたらと思います。

馬場秀幸  カテゴリー:仕事