雪の街だより 高田在住の弁護士馬場秀幸のブログです

9月21日 「逆命利君」の精神はどこに行った?

2020.09.21

 元総務官僚の平嶋彰英さん。当時の菅官房長官肝いりのふるさと納税に異を唱え、左遷されたとされる。その平嶋さん、「こうした『異例人事』は私だけではありません。だから、いまの霞が関はすっかり委縮しています。官邸が進めようとする政策の問題点を指摘すれば、『官邸からにらまれる』『人事で飛ばされる』と多くの役人は恐怖を感じている」「最終的には政治家に従うべきだと思います。・・・ですが、制度設計の過程で、もし問題点や修正すべき点があると気づいたなら、進言すべきではないでしょうか」という(朝日新聞2020.9.12「変わるか「政と官」)。
 ところで、「逆命利君」という言葉があります。昔の中国の古典の言葉です。「命に逆らいて君を利する、之を忠と謂う」を略した言葉です(佐高信「逆命利君」(講談社文庫)より)。部下は、正しいと思うことがあれば、たとえ命令に逆らってでもそれを言う。そして、上司は部下から忠言を受けたら、きちんとそれを傾聴しなければならない、ということです。
 政治の場合、政治主導というのは正しい。政治家は国民から選ばれた代表者ですから、官僚が政治家に従うのは当たり前です。しかし、それは大枠であって、何でもかんでも従えばいいというものでは決してない。国民の代表者である政治家と行政の専門家としての官僚、それぞれが協働してこそいい政治ができると思います。
 今、どうなんでしょうか?「忖度」は当たり前、総理に就任した菅さんも「反対するのであれば異動してもらう」と言い切っています。「逆命利君」の精神はないんでしょうか?

馬場秀幸  カテゴリー:その他