道端にコスモスが咲き乱れている。車で走っていても止めてしまおうかなと思うくらいみとれている。
　コスモスといえば、さだまさしの「秋桜」だ。
　ずいぶん昔の話だが、ボクの幼なじみの女性が結婚することになった。実家の家族や親戚が、公民館に集まって内々で嫁に行くその女性のために祝いの宴をしてくれた。宴たけなわのところで、みんなが女性の母親に向かって何か歌えと言ってきた。母親はカラオケの本を見ながら選んだ歌が「秋桜」だった。母親は、「薄紅の秋桜が秋の日の～」と歌い始めてはいいが、その後が続かない。涙を流す母親を見た娘も親戚もみんなでもらい泣きしたという。
　この時期にラジオをつけていると、季節の歌ということもあって「秋桜」が流れることがある。「薄紅の秋桜が秋の日の～」のメロディーが流れるだけで、自分もその宴の場面を想像してみて泣けてくる。
　自分もカラオケで歌いたいが、音が高くて自分が歌っても他人には雑音になる。車の中でこっそり口ずさむしかない。