雪の街だより 高田在住の弁護士馬場秀幸のブログです

国の立場と個人の立場 2

2019.01.26

それから。
「完全かつ最終的に解決した」っていうのも、私には合点がいかないんです。

 

だって、今日本の政府が言っているのは、韓国の元徴用工の個人的請求権について国家が放棄をしたんだから、今さらちゃぶ台をひっくり返すんじゃない、と言うんです。なんで勝手に国家が個人の権利を放棄するんですか?勝手にそういうことできるんですか?余りに非道いではないですか?

 

実は過去の日本政府はそこまで非道なことは言っていませんでした。ではなんて言っていたか。日韓請求権協定の意味するところは「日韓両国が国家として持っている外交保護権を相互に放棄したということだ」「個人の請求権そのものを国内法的な意味で消滅させたというものではない」(1991年8月27日柳井俊二外務省条約局長の答弁)。

 

外交保護権というのは、自国民が外国で身体や財産の損害を受けた場合に、個人が属する本国が外交手続でその外国から救済を求めることができることをいいます。

 

なるほど。そうだとすると合点がいきます。国が自分の持っている外交保護権を放棄しただけなんだ、国がその所属する国民個人の権利まで放棄させたわけではないということなんです。上で述べていた私の疑問もなくなりました。

 

今回の問題では、元徴用工が日本の政府や裁判所に対して損害賠償を求めて救済されない場合でも、韓国という国は国家としてその元徴用工に手助けすることはできない。ただし、元徴用工の権利が消滅したわけでない(韓国の国内手続きで救済される可能性まで放棄されているわけでない)ということになるのです。

馬場秀幸  カテゴリー:その他

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