是枝裕和 「万引き家族」やっと観れました。
「万引き家族」夏にテレビで放映されたのを録画しておいて、最近になってやっと観終えることができました。なかなか重たいし、背景事情も複雑で。理解するのが大変なため、観終わるまでに何日もかかりました。
真面目な人は、この家族の行動がわからないんじゃないか?と思います。だって万引きは窃盗だろう、身も知らぬ子どもを連れてきたら未成年者誘拐罪だろう、死んでしまったばあさんを自宅の庭に埋めたら死体遺棄罪でしょう、それを隠して年金受け取るなんて詐欺罪でしょう。わけのわからないことばかりやっている。
しかも、万引きしても罪の意識なし。死体を自宅の庭に遺棄してばあさんを生きたことにして年金を受けとっても罪の意識なし。真面目な生活をしている人からすれば、この人たちはだらしないどうしようもないやつらだと思うに違いない。
でもその一方で虐待を受けている子がいたら手を差し伸べるやさしさがある。そこで思わずホロリともさせられる。
観た人は、いったい自分がどっちの立場の人間なんだろうと考える。彼らの側にいるのかそれとも彼らを非難する側にいる人間なのか?
実は、ボクらも接見室のアクリル板越しにいわゆる「被疑者」や「被告人」と日々向き合っている。話をしながら思うことは、あちらの人もこちらの人も、みんな程度は違ってもズルさダラシなさと少しばかりの人情とを持ち合わせて生きているということだ。こちらとあちらとを隔てている壁は実はそんなに高くない。
この映画も「私たちの生きているのと同じ世界に彼らがいるー彼らが生きているその同じ世界に私たちがいる、と思わせる」(朝日新聞2018年6月8日、角田光代「理解できぬ世界は悪か」)
ただ、わからない人にはわからないかもしれない。それでもカンヌの最高賞だという宣伝に影響されて多くの人が映画を見てくれればそれでいい。監督も拍手してもらうことまで考えていないのでは?「世の中は、人間はそう単純ではない」というメッセージさえわかってもらえばそれでいいのではないか?と思いました。