12月9日 相続放棄のお話その2 「3カ月」の起算日はいつ?
相続放棄は、相続の開始があったことを知った時から3カ月以内にしなければならない(民法918条)。
この3カ月の期間を「熟慮期間」と呼んでいる。相続するかどうかを「熟慮」するのは3カ月で必要十分でしょうということである。
この熟慮期間は「相続の開始があったことを知ったとき」から始まる。だから、通常は被相続人が死亡して自分が相続人となったことを知った時点が、熟慮期間の起算日となる。ただ、この起算日がいつであるかが問題になることがある。
例えば、被相続人の死亡当時、プラスの財産もなければマイナスの財産もない。相続を真剣に検討する事情がないために相続するかどうかの選択もしないまま放置する。こういうことがよくある。ところが、ある日、債権者が現れていきなり多額の請求をしてくることがある。こういう時に、相続放棄をしなければと初めて思うのだが、さてもう熟慮期間はとっくに過ぎているのではないか、と慌てる。
被相続人が誰かの保証人になっている場合には、上記のようなことが起こる。誰かが自分の債務を真面目に返済しているうちは保証人も請求されることはない。しかし、保証人が死亡した後数年たって、その誰かが支払できなくなったとしたら、債権者はその保証人の相続人に請求をしてくることになる。
こういう場合、判例実務は、熟慮期間の起算日を相続人が保証債務を請求された日にずらして解釈をしている。死亡した日を知った日を起算日としたのでは、こういう場合、相続人は実質的に相続放棄するべきかどうかを「熟慮」できないからである。なので、妥当な解釈といえる。
だから、上記のような事例の場合、とにかくダメもとで弁護士事務所に相談に駆け込んでほしいと思う。なんとか理由をつけて多少相続放棄の申述が遅くなっても、理由をくっつけて相続放棄を認めてもらえる場合がありうるので。