8月12日 妙高市長選挙その1 公務員の地位利用による選挙運動の禁止について
暑い日が続く。
「新潟県妙高市の入村明市長が今年10月の同市長選に立候補を表明している同市の元職員、城戸陽二氏(55)の名刺を複数の職員に「頼むぞ」と言って配ったなどとして2022年8月12日、市民が入村市長を公職選挙法違反の疑いで妙高警察署に刑事告発した。」(上越タウンジャーナルより)
また、選挙だねえ(苦笑)。この事件で何が問題なのかご説明しますね。
まずは、公選法129条が規定する「事前運動の禁止」です。告示日までは「選挙運動」をしてはならないことになっています。皆さん、ここで驚くのではないでしょうか?「みんなやってるじゃん?」それは正しいともいえるし、正しくないともいえます。
「選挙運動」の定義が重要です。選挙運動とは、有権者に対する投票依頼及びそれに直接つながる投票とりまとめ運動のことを言います。したがって、投票依頼を目的としない一般的な政治活動は自由にできますし、立候補予定者のためのカンパ活動・推薦依頼活動・選挙運動員の勧誘、後援会の結成、加入呼びかけは直接の投票依頼を目的するものには該当しないことから、告示前にこういう活動がなされているわけです。
ただし、「選挙運動」とそうでない活動は、紙一重。後援会活動と言いながら、「(立候補予定者を)よろしく」なんてことはあるわけです。告示日が近づけば近づくほど、敵対陣営もピリピリしてきますから、選挙に関わる人は、慎重に活動しないと足もとを掬われてしまうしまうことになりますので、要注意。
次に、公選法136条の2の「公務員等の地位利用による選挙運動の禁止」です。公務員は、「その地位を利用して」選挙運動をすることができない。公務員がその地位を利用して行う選挙運動は、選挙の自由公正を害することが著しいと考えられるため、選挙前或いは選挙運動期間中を問わず禁止したものです。
地位利用には、公務員などの内部関係において、職務上の指揮命令権、人事権に基づく影響力を利用して、部下に対して投票を勧誘すること、なども含まれます(昭和39年5月11日、名古屋高裁)。
今回は、妙高市長が同市の職員らに立候補予定者の名刺を渡した行為が、上記の条文に抵触するということで、告発がなされたというわけです。