雪の街だより 高田在住の弁護士馬場秀幸のブログです

ヤマザキマリ『仕事にしばられない生き方』(小学館新書)

2019.12.24

 これは2018年10月発行されたもの。
 最近ヤマザキさんが実母のことを書いた『ヴィオラ母さん』(文藝春秋社)についての書評を読んで、それを探していたところ、『仕事にしばられない生き方』も見つけてこちらから先に読ませてもらった。
 ヤマザキさんは漫画『テルマエ・ロマエ』の著者。しかし、ボクはこの漫画を含めて彼女のマンガまったく読んだことがない。映画『テルマエ・ロマエ』も観ていない。ただただその破天荒な生き方が知りたくて本を買った。
 ためになることがたくさん詰まっていてすべて書ききれない。でも、「そうだよね」と思ったところを挙げてみると。

1 日本ではジョブズのような個性的な人間が生まれない。それは「どこかに自分だけ浮いてはいけない、無難な社会環境に帰属しなければ生きていけないという   プレッシャーがあり、それが大きすぎるからではないでしょうか」(149頁、これって鴻上尚史の言うところの「世間」だよね~)
2 自分に芯がないと不安になる。漠然とした不安とお金とが結び付くと、脅迫観念のように常にお金のことを意識する。不安だからお金を稼いでも使わない、それでも不安が解消されないと自分の子どもたちに頑張って勉強させて自分たちの面倒を見てもらおうと思うようになる。親から子に不安が連鎖して、将来設計も仕事の選択も、お金の毒性にすっかり支配される(291~292頁)。
3 そして、失敗について「しくじって痛い目にあったからこそ、二度とそういうことにならないように用心深くなるし、ちょっとやそっとのことじゃくじけなくなる」「失敗して何がいちばんよかったって、単に自分自身の経験値が上がるというだけじゃなくて、痛い思いをしたぶん、自分以外の人間のことを、簡単に見くびったりバカにしたりはできなくなる」「自分の思い込みを、自分で壊しては、また立て直し、また壊しては、立て直していく。それを繰り返すことで、自分自身も更新されるし、目の前の世界も、どんどん、新しく開けていく(209~210頁)。

 とにかく前向きなんですよね。孤立を恐れない。一人になっても進んでいけば、理解してくれる人に会えるだろうと。そして、失敗を恐れない。失敗することによって、自分を立て直していくことができる。そういう思想が全編に貫かれています。元気がほしい人にお薦めです。

馬場秀幸  カテゴリー:書籍・映画