雪の街だより 高田在住の弁護士馬場秀幸のブログです

刑事裁判 「遮へい」は安易に認めるべきではない

2019.11.18

 今日は真面目に刑事裁判の話をします。
 刑事裁判では、証人が被告人の面前で供述するときに被告人から圧迫を受けて精神の平穏を著しく害されるおそれがあると認められるときは、被告人と証人との間で相手の状態を認識することができないようにします。これを遮へい措置といいます。具体的には、証人と被告人との間に衝立を立てるのです。また、証人が傍聴人に対して素性が明らかになると困る場合があります。この場合にも証人と傍聴人との間で遮へいの措置がなされることがあります。
 被告人は「証人に対して審問する機会」が十分に与えられることを憲法上保障されています。この証人審問権には、当然に、被告人が証人の法廷で証言する態度、様子、仕草などを直接に認識できることも含まれています。証人の法廷の場における供述態度は証人の証言の信用性を判断するために不可欠だからです。この原則からすると、遮へいの措置は制限的でなければならないと思うのですが、実務は証人に配慮して遮へいを容易に認める傾向にあります。
 私は、正直余り問題意識がなかったのですが、先日考えさせられることがありました。この時の公判でも、証人尋問の際に遮へいの措置が認められてしまったのですが、証人と被告人、傍聴人とを遮るついたてがあったために、なかなか証人の口から出てくる音が少なく、その小さな音をついたてが遮ったために被告人にも傍聴人にも声すらなかなか聞き取れないということがありました。被告人は証人の発言に対して、弁護人の反対尋問で弾劾する権利があります。しかし、声すら聴くことができなければ、その被告人の権利すら保障されない。
 遮へいするにしても、マイクを使用して証人の声を聞き取りやすくするとか、被告人の防御権に配慮した運用がなされるべきだと思います。

馬場秀幸  カテゴリー:仕事