雪の街だより 高田在住の弁護士馬場秀幸のブログです

離婚:離婚の協議内容は公正証書で作成したほうがいいのでしょうか。

2019.09.14

 離婚での取り決めを文書化したものは一般に「離婚協議書」「合意書」という。その内容を公証人が作成したものが離婚についての「公正証書」になる。
 取り決めを文書化するのは、将来、相手方が約束を履行しない場合にそれを担保する(履行させる)ことを目的とする。
 ただし、一般の私的文書は、まず裁判所でその権利の所在を判決で確認してもらい、裁判所のお墨付きを得た判決分で強制執行をする。つまり、相手に約束を履行させるまでに2段階の手続き(判決手続、執行手続)を踏む。
 他方、公正証書があると、判決手続きを通り越していきなり執行手続に入ることができる。これが公正証書を作成するメリットである。権利を実現する目的からすれば、作成したほうがいいに決まっている。
 ところが、20年余り弁護士をしているが、離婚で公正証書を作成したのは2~3件にとどまっている。
 理由は、離婚の公正証書も契約の一つであり、離婚当事者双方の承諾が必要である。ところが、多くの離婚というのは、離婚するしないでもめていたり、財産の清算でもめている。内容を双方が合意しているケースというのはめったにない。
 しかも、公正証書のメリットは、離婚の調停調書で実現できる。相手方から公正証書の作成の承諾を得るのに手間がかかるくらいであれば、早急に調停の申立てをして裁判所で調停を成立させたほうが早い場合がある。
 だから、公正証書の作成に相手が協力しなくても動揺する必要はない。通常の手続きで調停の申立てをして調停を成立させればよいのである。

 

馬場秀幸  カテゴリー:仕事