雪の街だより 高田在住の弁護士馬場秀幸のブログです

1月27日 コロナのとばっちりその50「最終的には生活保護」

2021.01.27

 「最終的には生活保護がある」という首相答弁が波紋をよんでいる。質問をした者にしてみれば、生活保護に陥らせないことが、首相の仕事、政治ではないか、「生活保護がある」というのは、何もしないということと同じではないか、といいたいのだ。
 個人的に、「最終的には生活保護がある」という答弁はそれほど違和感はない。生活保護の受給は憲法が保障した基本的人権である。それが権利として本当に保障されているのであれば、最後のセーフテイネットとして生活保護がある、というのはむしろ当然だと思うからだ。
 問題は、それが必ずしもセーフテイネットとして機能しているわけではないということだ。
 資産があると、生活保護を受けることはできないと言われている。私の依頼者で車の使用を認められないと言われた者がいた。保有を認めてもらうために必要性を訴える意見書を起案して福祉事務所に提出した経験がある。簡単に誰もが受けられるというものではない。
 扶養照会という制度がある。親戚に扶養ができるかどうかを確認する手続きである。最近の報道によれば、受給要件を満たしていても、親族に扶養照会がいき、自分が生活保護を受けることが分かってしまうのがいやで3人に1人は保護受けるのをあきらめている、ということだった。
 生活保護を受けることは「恥」だという意識。これが生活保護の利用を遠ざけている。菅首相はどれだけ事の本質を理解しているのだろうか。セーフテイネットであるという意識があるのなら、その利用しやすいように舵を切るような深みのある議論をこれから期待したいところだ。

馬場秀幸  カテゴリー:その他