雪の街だより 高田在住の弁護士馬場秀幸のブログです

1月3日 村山治「安部・菅政権vs検察庁 暗闘のクロニクル」(文藝春秋)を読む

2021.01.03

 2020年1月に、定年を迎えるはずだった東京高検検事長黒川弘務の勤務延長がなぜ認められたのか。この本を読むとわかります。
 検察庁は、稲田検事総長の後任候補として一貫して林名古屋高検検事長を推してきた。ところが、政権側は第二次安倍政権で法務省の法務事務次官として働いてきた黒川を次期検事総長として推した。背景事情としては、「桜を見る会」の捜査対策として、官邸と近い黒川が検察のトップにいたほうが都合がよいと考えたようである。
 黒川が検事総長になるには、稲田が2020年1月に勇退しなければならない。しかし、官邸の度重なる説得にも、稲田はその時期の退任を渋ったという。そこで、検察庁法の従来の解釈を変更した「勤務延長」が実行された。
 大筋はこんなところでしょうか?第二次安倍政権になって、省庁人事に対する積極的な介入は当たり前になりましたが、それは検察に対しても同じだったようです。官邸側の要請に法務省・検察庁は防戦一方だったことがわかります。
 仮に680万余のツイートによるオンラインデモがなければ、検察庁も検察庁法の改正をそのまま受け入れていたのではないかとすら思います。逆をいえば、オンラインデモによって、寸前のところで検察の政治からの独立の理念がなくなることを食い止めてくれたともいえますね。

馬場秀幸  カテゴリー:書籍・映画