雪の街だより 高田在住の弁護士馬場秀幸のブログです

1月4日 山浦善樹「お気の毒な弁護士」(弘文堂)を読む

2021.01.04

 著者は弁護士から最高裁裁判官になった方です。
 最高裁裁判官といえば、雲の上の上の方でとっつきにくいイメージしかありませんが、この著者に限ってはそんなことはありません。
 山浦さんは、ずうっとマチ弁として市民生活の中で仕事をされた方。司法研修所などで司法試験に合格した修習生を指導する中で弁護士会の推薦を得て最高裁裁判官になられました。ちなみに山浦さんは、マチ弁を「目の前にいる依頼者(市民)の不安を取り除き、少しでも良い生活ができるように支援するという姿勢で仕事をする弁護士のこと」と定義されています(本書1頁)。
 山浦さんは、マチ弁であることを誇りに弁護士をされてきました。最高裁裁判官にはなりましたが、退官した後は、また東京の神田で事務所を再開してマチ弁活動をされています。本書はマチ弁から裁判官になられるまでの山浦さんの自伝になります。本書に貫かれているのは、ひとえに市民のために寄り添って仕事をするというマチ弁としての誇り、マチ弁への熱き思いです。
 かつて、弁護士事務所は敷居が高いと言われました。そして、一連の司法改革により、弁護士人口は増加の一途をたどりました。弁護士がいないゼロワン地域は今ではほとんどなくなったと思います。しかし、敷居は低くなったかというとそうではない。今でも、やっぱり「敷居は高い」と言われています。数が増えればそれでいいというわけではない。質の問題だと思うんです、どれだけ顧客のためになる仕事をするか。それがまだ問われ続けている。自分もマチ弁のつもりですが、山浦さんの本を読んでまだまだだなあと反省することしきりです。でも、年の始めに読んでよかった、年初から気合を入れて頑張れそうです。
 やや専門的な部分もあるので、一般人向けではありませんが、現役の法律家やこれから司法試験にチャレンジする方には是非お薦めします。

馬場秀幸  カテゴリー:書籍・映画