雪の街だより 高田在住の弁護士馬場秀幸のブログです

3月3日 内密出産はなぜ必要か?

2022.03.03

 「内密出産」という言葉がよくわからん。それでも、その必要性を理解できるエピソードがある。 
 ベトナムから技能実習生として来日したリンさんという女性がいた。
 リンさんは、2020年7月ごろ妊娠にきづいたが、「妊娠がわかれば母国に帰される」ことを危惧して誰にも妊娠のことを告げず、妊婦健診も受けず、11月15日の出産まで身重の体で働いた。同年11月15日午前、技能実習先のミカン農家の自室でたった一人で双子を出産の末に死産。遺体をタオルで包み、寒くないように段ボール箱を二重にしてセロハンテープで封をして自室の棚に置いて一晩過ごした。翌日、監理団体がリンさんを病院に連れて行き、リンさんはは医師に泣きながら妊娠と死産の事実を告白した。ところが、リンさんは双子の死体を放置したということで死体遺棄罪として起訴され、一審二審ともに有罪判決が言い渡されている(現在上告中、赤旗2022年2月16日付)。
 妊娠が周囲から望まれない場合、出産しようと思えば妊娠を隠すほかない。そうすれば、母体も胎児も危険にさらされる。死産になってしまえばリンさんのように死体遺棄罪に問われてしまうこともある。そうさせないために内密出産ということが必要になってくるのだろう。

馬場秀幸  カテゴリー:仕事