雪の街だより 高田在住の弁護士馬場秀幸のブログです

3月4日 「赤ちゃんポスト」から「内密出産」へ

2022.03.04

 ところで。
 慈恵病院(熊本市)が、親が育てられない赤ちゃんを匿名で預かる「こうのとりのゆりかご」(赤ちゃんポスト)を始めたのは2007年のことである。この計画は、当時、大きな議論を呼んだ。当初「安易な預け入れにつながる」などと反対も多かった。時の安倍晋三首相も「親として責任を持って産むことが大切ではないか。大変抵抗を感じる」などと発言した。そんなな感じで、始まったばかりの「赤ちゃんポスト」は、賛否が拮抗していたような感じだった。しかし、理事長の蓮田医師(2020年に死去)は、「ゆりかごは命を救う最後の手段」とぶれなかったという。
 預けられた子の多くは、母親が周囲の援助が受けられないま孤独で出産していたケースだったという。これが、今度は、匿名のままに出産をさせる「内密出産」の考えに繋がっていく。
 「内密出産」については、親の名前を知らせないままに出生届けをすることが許されるか、子どもの出自を知る権利はどうするのか?という様々な問題がまだ未解決である。それでも、赤ちゃんポストの是非が論議されたときよりも、世論の反応はずいぶんと優しくなっていると感じる。おそらくは、慈恵病院の一貫して子の生命を大切にしてきた実践が評価されてきたのだろう。もちろん、妊娠・出産、子育ての孤立化、貧困化が広がっていることもあるだろう。
 蓮田医師は、生前、「ゆりかごはできるだけ利用されない方がいい。預けるのではなく、相談してほしい」と言っていたという。妊娠出産、子育て。母親を孤立させない相談体制が一つの病院、一つの県に限らず、その理念や取組がもっともっと広がってほしいなあと思う。
 

馬場秀幸  カテゴリー:その他