雪の街だより 高田在住の弁護士馬場秀幸のブログです

3月9日 バス・トラック運転手などの労働条件を定める「改善基準告示」の見直し議論

2022.03.09

 今日は真面目な仕事の話です。
 バス運転手などの運輸業界で働く人の労働ルールを定めた「改善基準告示」の見直しに向けた議論が厚生労働省労働政策審議会で行われています。焦点は、勤務終了から翌日の勤務までの「休息」時間。現行の8時間から、9時間或いは11時間にするのかです(20220308赤旗)。
 トラック・バスなどの自動車運転手の労働は、その職務の性質上長時間の過密労働となりやすく交通事故が惹起されるおそれがあることから、労働時間について特別な規制がされていました。現行の告示は、一日の拘束時間は原則として13時間(特別な場合は16時間)までとし、「休息」時間は8時間以上としていました。
 今回の見直しでは、厚労省は、「休息」時間を11時間に拡大する案を提示していましたが、経営者側が9時間案を提出。この9時間案に労組代表も基本的に受け入れる姿勢を示しているとのことで、議論は3月でヤマ場を迎えるようです。
 しかし、「休息」時間内で、労働者は、会社から自宅まで帰り、食事や入浴など雑事をして睡眠をとり、また自宅から会社に出勤しなければなりません。8時間或いは9時間というのでは十分な時間とはいえません。
 労働者は、帰宅して、夕食を食べたり、テレビや新聞を見たり、入浴したり、夫婦で会話をしたり、家庭内のこまごましたこと、周りのことをすることによって、「自分自身をようやく回復させる最低限の時間」を過ごしているといえます(暉峻淑子「豊かさとは何か」127頁)。通勤時間を1時間~1時間半、睡眠時間を7~8時間、入浴・食事その他の日常雑事を1時間半~2時間半とすれば、11時間程度の「休息」を保障することは当然ではないかと思います。

馬場秀幸  カテゴリー:仕事